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読書の秋と「紙のしおり」の奥深さ

2025.09.16

秋の夜長、静かに本を開く時間が心地よい季節。「読書の秋」とともに楽しみたいのが、紙の温もりが伝わる“しおり”です。

しおりの語源は「枝を折る=枝折(しおり)」に由来し、もともとは道しるべの意味。現在でも、読書の「今いる場所」を示す小さな案内役として活躍しています。紙でできたしおりは、ただ便利なだけでなく、紙の魅力や技法が詰まった“手のひらのアート”でもあります。

たとえば、和紙のしおりは光を柔らかく透かし、自然素材ならではの手触りと風合いが魅力。型染や友禅染、金箔押しなど、日本の伝統的な紙加工技術を活かしたデザインも多く、まさに「使える美術品」。紅葉や桜、流水文様など、季節を感じるモチーフが紙の上で息づきます。

紙屋としては、紙選びの妙にも注目したいところ。厚口の和紙や、繊維感の強い未晒しの手漉き紙を使うと、しおりとしての強度と高級感が増します。近年は環境にやさしい紙や、間伐材を使ったサステナブル素材のしおりも登場しており、紙の可能性はますます広がっています。

紙と本とをつなぐ“しおり”は、読書という時間にそっと寄り添う名脇役。この秋、自分だけのお気に入りの紙しおりを見つけて、本との時間をもっと深く楽しんでみてはいかがでしょうか。

by fujikawa